2024/11/12

浮気性の妻を愛する音楽家は

かもめが枕元で鳴くのをたしかに聞いた

仕方なく瞼を持ち上げたら見慣れた壁

四角い部屋の中で自分の頭はどこを向いているのかわからない

夜中 玄関横に佇む洗濯機の冷たさ

地球を支える大男の膝と地面の接地面

たからぶね という文字の並び

破れた自転車のサドルに染み込む雨

接地面とはどことの接地面か

とにかくここは砂浜ではないのだ

眩しい太陽の残像が、目を閉じる度に映ればいいのに