浮気性の妻を愛する音楽家は かもめが枕元で鳴くのをたしかに聞いた 仕方なく瞼を持ち上げたら見慣れた壁 四角い部屋の中で自分の頭はどこを向いているのかわからない 夜中 玄関横に佇む洗濯機の冷たさ 地球を支える大男の膝と地面の接地面 たからぶね という文字の並び 破れた自転車のサドルに染み込む雨 接地面とはどことの接地面か とにかくここは砂浜ではないのだ 眩しい太陽の残像が、目を閉じる度に映ればいいのに ← 眠り過ぎた日に